フォトコンテストに応募する時に注意した方がいい「著作権譲渡」のお話

この記事は約6分で読めます。

みなさんはフォトコンテストに参加されたことはあるでしょうか?

最近ではinstagramなどSNSを通じて手軽に参加できるコンテストも増えてきたので、参加したことがある人も多いのではないかと思います。

気軽にフォトコンテストに参加できるようになって、写真に興味を持つ人は確実に増えたと思います。そのいい効果の反面、トラブルも起きていると聞きます。

それが今日ご紹介する「著作権譲渡」の問題です。

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フォトコンテストと著作権譲渡の問題

「インスタ映え」コンテストで著作権侵害が横行 | AERA dot. (アエラドット)
2017年の流行語大賞に「忖度」と共に選ばれたのが「インスタ映え」だ。若い世代はともかく、中年以降にとっては耳慣れない言葉かもしれないので一応解説すると、自分で撮影した写真を投稿するタイプのSNS…

フォトコンテストと著作権侵害の事例として簡潔にまとめられたのが上の記事です。

簡単に言うと、SNSを通じて応募するフォトコンテストの中で、応募規約に「作品を応募した時点で、その作品の著作権は主催者に帰属します」などとされているものがあり、応募写真を主催団体に自由に使われたり、自分でその写真を使えなくなるというものです。

記事中では「効率のいい写真素材集め」と表現されていましたが、主催者としては応募作品を自由に使えるため、こんなおいしい話はありません。参加者側からすればとんでもない話ですが・・・

最悪の場合は、応募作品を自分のホームページやSNSに掲載したりすると逆に主催団体から「無断使用」として訴えられる可能性さえも出てくるということです。

著作権についての理解が薄いという問題

フォトコンテストと著作権譲渡をめぐってトラブルが起こる背景には、「著作権について日本ではそもそも知られていない」という点があると思います。参加者側はもちろん、主催団体側でさえも必ずしもきちんと理解して応募規約を決めていないようなケースも多く見られます。

著作権とはWikipediaによると

作品を創作した者が有する権利であり、また、作品がどう使われるか決めることができる権利である。作者の思想や感情が表現された文芸・学術・美術・音楽などを著作物といい、創作した者を著作者という。知的財産権の一種。

と定義されています。著作物をどのように使うかを著作者が自由に決められ、著作物の財産的価値を守るために定められています。

この「財産的価値を守る」という印象が一般的にも強いので、財産権的な側面で著作権が捉えられていることが多いのですが、著作権にはもう1つの重要な面があり、「著作者人格権」というものも含まれています。

①公表権(自己の著作物を公表するか否か等を決定する権利)
②氏名表示権(自己の著作物に著作者名を付すか否か、どのような名義を付すかを決定する権利)
③同一性保持権(自己の著作物の内容や題号をその意に反して改変されない権利)

上の3つが著作者人格権の内容と言われるもので、著作者の人格的利益を保護するものになっています(個人的には著作者のアイデンティティやプライドを守り、著作者を尊重するものだと理解しています)

この著作者人格権は、一身に専属する権利=著作者でも第三者に譲渡できない権利(著作権法59条)とされています。
(その著作を誰が生み出した、どうやって生み出したかという事実は変わることがないという意味で)

というわけで、一口に「作品を応募した時点で、その作品の著作権は主催者に帰属します」と応募規約で決めていても、財産権を著作者から主催団体に移転することはできても、著作者人格権をそのまま移転することはできないわけです。

実際は「著作者人格権の不行使」という規定を定めて、著作者が人格権を主張しないようにしてもらうのですが、そういった規定がなく、「著作権は主催者に帰属する」の一文で済まそうとしている時点で、「この主催者は分かってないな~」と感じてしまいます。

フォトコンテストに応募する際は規約を読み、納得したうえで

先の項目では大まかな著作権の内容と問題点を見てきました。
近年では最初の事例のようなフォトコンテストでのトラブルが増えてきたこともふまえ、少しずつですが改善に向けての努力が続いています。

https://jpca.gr.jp/wp-content/uploads/photocon_guideline202008.pdf

上の文章は「日本写真著作権協会」というところがフォトコンテスト主催者に向けて提示したものですが、参加者の権利を守る方法の1つとして参加者の方にも参考になりますので、よろしければご一読ください。

簡潔にまとめると

①応募作品の著作権は応募者にある。
②入賞作品の利用にあたっては、利用する期間と目的、使用媒体を明記する。利用の際は氏名などを明記する。
③営利目的の使用など応募者の許可が必要な事項については、個別に許可を得る

などの点で、応募者の権利を守る規定が必要だと提示しています。

これからフォトコンテストに応募してみようとお考えの方は、これらの点に沿って規約を確認し、分からない点については事務局に確認することをおススメします。

もし仮に自分の著作権が守られず、作品が使えなくなるような内容であれば残念なことですが、応募を控えるなどの対応も自分の作品を守るためには必要なのかもしれません。

著作権問題を適当に扱うと主催者も被害を受ける

フォトコンテストの主催者の面からも著作権問題について触れておきたいと思います。

僕自身もご縁でいくつかフォトコンテストの運営に協力したことがありますが、応募規約づくりというのはかなり神経を使う作業です。参加者が応募にあたって誤解しないか、ルールに従って撮影された作品が応募されてくるか、審査後にトラブルが起きないかなどに注意しながら規約を練り上げます。

特に著作権に関する規定はかなり難しく、今でもかなり悩みどころです。入賞作品を事後に使用させていただくことを考えるとすれば、使用許可をとる作業もありますし、使用条件を合意するのもそれなりに手間がかかります。

しかし逆に言えば、人の著作物をトラブルなく使用させてもらい、主催者も応募者も納得できる形で写真を使うということはそれだけの手順がかかるということです。

あるフォトコンテストで起こったトラブルの事例です。

そのコンテストは見るからに適当な体裁の応募規約でした(普通に応募時点で主催者に著作権が移転するなどとありました)

入賞作品の中に本来であれば撮影禁止の場所から撮影した写真が含まれており、応募者が土地の管理団体からクレームを受けましたが、そのクレームはコンテストの主催者まで飛び火したのです。

主催者は「応募者の責任なので主催者に責任はない」と突っぱねましたが、著作権移転の規約などのせいで土地の管理団体から連帯責任を負うように指摘され、応募者とともに責任を負わされたそうです。

著作権を持つということは著作物への財産権を手に入れると同時に、責任を負うということです。
財産権(この場合は写真を利用する権利)という目先の利益だけを考えていると、応募者が本来負うべき責任も負ってしまうことになるかもしれません。
(応募規約で「問題がある写真は応募してはならない」のような項目を入れればよいという意見もありそうですが、トラブルを訴える相手がそれだけで免責してくれるとは限りません)

結局は応募作品を利用する場合、各作品をしっかりと見極め、手間はかかっても各応募者に利用条件を明示したうえで個別に許可をとることがトラブル回避につながるのではないでしょうか?

「応募者の権利をしっかりと考え、安心して応募できる規約を作っていく。そのことがトラブル回避にもつながり、フォトコンテストへの信頼感も高めていく」ということを主催者の方にも肝に銘じていただきたいと思います。

最後に

今回はフォトコンテストと著作権という視点で見てきました。

写真と著作権の問題に関しては、コンテストに限らず写真業界全体で現在進行形で議論されていることでもあります。

インターネットやSNSが急速に発展してきた中で、写真の無断使用のトラブルも取り上げられるようになってきました。

写真業界がより発展していくためにも、写真に関する権利と責任についての議論がこれからより活発になっていくことを期待します。

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