写真教室をやっていると生徒さんから「先生のようなプロカメラマンは基本的にマニュアル設定で撮ってるんですか?」とよく聞かれます。
そこで「基本は絞り優先モードが多いですね」とお答えすると、「え?マニュアルじゃないですか?」と意外な反応が返ってくることがよくあります。
プロカメラマン=マニュアル撮影
世間的な印象はやはりそうなのでしょうか?でも絞り優先モードって便利なんです。
今日はそんな「プロカメラマンなのに基本設定が絞り優先モード」な理由を解説します。
おそらく趣味でカメラを楽しんでいる方の参考になる部分もあると思いますので、ご一読いただければ嬉しいです。
絞り優先モードとは?
まずは簡単に絞り優先モードのおさらいです。詳しくは解説されているホームページがたくさんありますので、そちらをご一読ください(;・∀・)
最初の写真のようにカメラについているダイヤルをAまたはAvに回すと設定されるのが「絞り優先モード」です。
カメラには露出(明るさ)を決定する3要素として「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」があります。このうち絞りを自分で好きな数字に設定すると、適正な明るさになるようにシャッタースピードをカメラが決定してくれる機能です(ISO感度は自分で決めてもいいし、オートにもできる)
また絞りには数字を小さくする(開ける)と背景がボケやすく、数字を大きくする(絞る)とボケにくいという性質もあるので、絞りを使ってボケのコントロールをすることができます。
↑絞りの数字が小さい(開けた)
↑絞りの数字が大きい(絞った)
マニュアル設定と言えば絞り、シャッタースピード、ISO感度を自分で設定するので少し慣れと練習が必要ですが、絞り優先モードだとその負担がかなり減りますし、「ボケ」という写真の重要な要素をコントロールできるということで初心者から上級者までおススメされている撮影モードと言えます。
絞り優先モードの解説に関してはいつも参考にさせていただいているコチラのサイトさんのが分かりやすかったので、よろしければご一読ください↓
マニュアルモードとは?
念のため「マニュアルモード(M)」にも簡単にふれておきます。
文字通りマニュアル=手動ですので、絞り・シャッタースピード・ISO感度を自分で設定して露出を設定します。
難しそうな印象がありますが、一眼レフだとカメラ内に明るさを測る露出計があり、モニターに表示されるので、それを見ながら設定すればOKです。
自分で全ての数字をコントロールできるので、狙い通りの設定が可能ですし、条件が一定であればずっと同じ露出で撮り続けられるというメリットもあります。
そういった意味では、慣れれば自分の狙いがそのまま表現できますし、露出も揃えられるので便利なモードと言えるかもしれません。
なぜ絞り優先モードを基本にするのか
以上、簡単に絞り優先モードとマニュアルモードにふれてきましたが、これだけを見ているとマニュアルモードも一眼レフになって手軽に使えそうな感じもします。
しかし自分の撮影データを見返してみると、絞り優先モード8割に対してマニュアルモード2割くらいの割合で撮影していました。
確実にマニュアルモードを使っていると言えるのは、夜景撮影とストロボを使ったライティングを施した撮影(スタジオなど)くらいのものです。
ここからはなぜ私が絞り優先モードを基本に撮影を行っているのか、その理由を解説していきたいと思います。
*これはあくまで私の撮影スタイルから来るものです。プロカメラマンでも撮影スタイルや被写体などでマニュアルモードを中心に使っている方もいます。
1、スピーディーに露出設定を行うため
マニュアルモードに比べ、絞り優先モードの方が素早く露出設定ができるというのが第1の理由です。ただそれですと「シャッタースピード優先ではだめなのか?」という疑問も出てくると思います。
これに関しては、絞りとシャッタースピードの数値の配置を見ていただければお分かりいただけるかと思います。
ロケーション(野外)撮影が多い私のスタイルでは、だいたい使う絞り値も絞られていてF2.8~F8くらいがほとんどです。場合によってはそれ以上の明るい絞りやF11などを使うこともありますが、だいたいこの範囲で事足りることが基本です。
それに対し、シャッタースピードで言えば基本は手ブレしない範囲で設定することになるので(動くものや特殊な表現は別)、60分の1秒くらいから2000分の1秒くらいの広い範囲を使う可能性が出てきます。
したがって選択肢が少ない絞りを自分で決めて、シャッタースピードをカメラにある程度任せるというスタイルの方が圧倒的に素早く露出を決めることができます。
↑その上で若干の露出の調整は「露出補正(シャッター右下のボタン)」で行っています。
この「スピーディーに露出を決める」ということについて、別のカメラマンさんが動画にまとめられていました。よろしければご参考に↓
2、被写体に集中するため
1の部分と少し重なりますが、操作を簡略化してできるだけ被写体に集中したいというのが第2の理由です。
撮影として野外で写真に撮られ慣れていない一般の方を撮影することが多いので、カメラの設定よりもコミュニケーションや構図づくりに集中するためです。
なお、絞りを調整することで写す人数に見合ったボケ味(被写界深度)で撮るようにしています(1人でのプロフィール写真なら絞りを開けてボカす、集合写真なら絞って各人にピントが合いやすくするなど)
3、野外だと光の条件が変わりやすい
先ほど「確実にマニュアルモードを使っていると言えるのは、夜景撮影とストロボを使ったライティングを施した撮影(スタジオなど)」と書きました。
これは夜景やスタジオ撮影では、光の条件がある程度一定であることからマニュアルモードを使って撮影した方が露出を揃えやすいというメリットがあるからです。
野外でも天気が安定していればそれほど露出を変える必要がないように思えるかもしれませんが、撮影する光の向き(順光・逆光・サイド光など)によってかなり露出が変わってきます。
この場合はある程度カメラ任せにした方が撮影しやすいというのが私の経験上から感じていることです。その上であまり露出にばらつきが出るようなら、露出補正や撮影後の編集作業で対応するようにしています。
ただ夕日時の撮影など激しい逆光を伴う場合など、難しい条件の時は露出補正で十分に対応できないこともありますので、その時に初めてマニュアルモードでの設定を考えます。
4,露出を揃えられると編集作業の手間が減る
3にも関連しますが、マニュアルモードに比べて撮影時の露出がある程度一定になるからです。
これは設定でマニュアルモード以外のモードを使った際に言えることですが、同じ撮影場所で少しの光量の変化であればマニュアルモードより露出(明るさ)が揃いやすいです。
その結果、撮影後に行う編集作業で露出を調整する手間がかなり減り、作業スピードを速めることができます。
まとめ~その人の撮影スタイルに合わせた設定方法が一番大切~
なぜ自分が絞り優先モードを基本にして撮影しているのかについて解説してきました。
簡単にまとめますと「自分のスタイルに合う方法が絞り優先モードだった」ということです。
自分もプロカメラマンが関わる全ての撮影を見たわけではないですが、ライティングで光をコントロールするスタジオカメラマンならほとんどマニュアルモードを使うでしょうし、動きを表現するスポーツカメラマンなどではシャッター優先モードやマニュアルモードを使っている人も多いのかもしれません。
そこには正解は無く、設定方法はあくまで手段でしかないので結果的に「クライアントに評価される写真をきちんと残せるか」という点だけが重要なはずです。
今回は写真教室で出された質問をもとに書きましたので、露出設定に関する内容となりましたが、他のさまざまな設定もカメラマンそれぞれにいろんな違いがあるはずです。
「こんな写真が撮りたい」というところからスタートして、「自分はこんな撮影スタイルだからこういう設定が向いている」というのを見つけてもらって、撮影を楽しんで行ってもらえればいいんじゃないかと思います。
↓写真教室なども開催していますのでぜひ