出張撮影カメラマンが考える人物撮影のためのレンズ選びの大事なポイント

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カメラで撮影をされているみなさんはどうやって使うレンズを決めていますか?

一眼レフやミラーレス一眼はレンズが交換でき、それによって撮れる写真も変わっていくのが楽しいところですが、どんなレンズを使うべきかという悩みもつきまといます。

基本的にはカメラマンが撮りたいイメージや撮影場所の状況に応じて、好みのレンズを使えばいいのですが、最近いろいろと考えると人を撮る時に関しては「撮られる人との関係がレンズ選びでは大事なんじゃないか?」とあらためて思ったりします。

今日はそんな人物撮影におけるレンズ選びについて少し書いてみます。

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レンズを変えると何が変わるのか

カメラを使わない方・始めたばかりの方は「レンズを変えるとどうなるの?」というのもあると思うので、簡単に説明すると次のようになります。

①撮れる範囲(画角)が変わる

それぞれのレンズごとに撮れる範囲(画角とも言います)が変わり、広く撮れたり、1つのものを大きく撮れたりします。

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↑広く撮った例(広角レンズで撮影しました)

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↑1つのものを大きく撮った例(望遠レンズで撮影しました)

②背景がよくボケたり、ボケの形が変わる

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↑ピントが合っているスマホの背景がボケています。一眼レフだとこの現象を起こしやすいのですが、レンズを変えるとよりボケたり、ボケの形が変わったりします。

③描写が変わる(彩度やコントラストなどが変わる)

レンズは作られた年代やメーカーによって、微妙に描写も変わります。
特に最近のレンズが彩度(色の鮮やかさ)やコントラスト(光と影のバランス)がくっきりしやすいのに比べ、昔のレンズは少し描写が穏やかなものが多いです。

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↑上下とも同じ50㎜という焦点距離の単焦点レンズで、ほぼ同じ絞り・シャッタースピードで撮影したもの。
上は最近発売のレンズ、下はフィルムカメラに使われていた昔のレンズ(オールドレンズ)で撮影しています。

④ゆがみと圧縮効果

広角のレンズで撮るとゆがみが出ることがあります。一方、望遠のレンズだと被写体と背景の距離が近づいて見える圧縮効果が出ることがあります。

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↑広角のレンズで撮ったもの。ゆがみが発生して本来は真っすぐな花の茎が曲がっているように見えます。

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↑望遠のレンズで撮ったもの。圧縮効果で花の密集具合がより際立っています。

レンズによって距離感も変わる

上の項を読んでいただいて、何となくですが「レンズを変えると写真の表現がいろいろ変わる」ということがお分かりいただけたと思います。

ただふと立ち止まって考えると、表現を変えるためにレンズを変えるというのはカメラマン側のお話です。人物撮影の場合、撮られる人からすればレンズを変えると言うことは別の意味が出てきます。

それは 

「使っているレンズによってカメラマンとの距離感が変わってくる」 

ということです。

特に撮れる範囲(画角)を決める「焦点距離」をどうするかによって、被写体にどれくらい近づくかが決まってきます。

例えば下の2枚は同じ85㎜という焦点距離のレンズで撮ったものです。

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上の写真はモデルさんからかなり離れて、下の写真は近づいて撮影しています。

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上の2枚は上が24㎜、下が200㎜の焦点距離で撮影しています。

モデルさんの写る大きさがあまり変わっていないのは、上はかなり接近しているのに対し、下の写真は相当離れた位置から撮影しているからです。

当然ですが、メインの被写体(ポートレートの場合はモデルさん)の大きさは「どんな焦点距離のレンズを使うか」+「どれだけ被写体に近づくか」によってきまってきます。

ですので写真全体の中でモデルさんを大きく写そうと思えば、被写体に近づくかまたは望遠レンズを使うかの2つの方法があります。
当たり前すぎて書くのが申し訳ないくらいですが、この「どれくらいモデルさんとカメラマンとの距離を取るか」というのはポートレート撮影においては、最重要レベルの問題だったりします。

人物撮影は撮る人と撮られる人の距離感・関係性が写真に現れる

みなさんは誰かに一眼レフで写真を撮ってもらったことがあるでしょうか?

僕は自分が撮る立場ながら撮られるのは苦手なので、一眼レフのようなゴツいカメラを向けられても表情を作れるモデルさんって凄いなと思います。

基本的には日ごろから撮られている人でなければ、カメラを前にするといつも通りの表情は難しいかもしれませんね。カメラマンが恋人とか家族、仲のいい友人とかなら緊張もしにくいかと思いますが。

ですから、人物撮影は撮る人と撮られる人の距離感や関係性が写真に現れることがよくあります。
両者の関係が親しければ距離感が近く、親密感が表現しやすいですし、一方であまりお互いを知らない関係だとどこか距離感も遠い写真になることが多いですね。

この「距離感」という問題は出張撮影カメラマンにとってはかなり悩ましく、力量を問われる点です。
初めて撮影させていただくお客さま、撮影に慣れていないお客さまがほとんどという中で、上手くコミュニケーションを取りながら撮影イメージごとに絶妙に距離感を判断しなければいけません。

そこで重要になってくるのが「適正な距離感を保つためにどんなレンズを使うか」という点になります。

【重要】表現を求めてレンズを変えるのはカメラマンの都合でしかない

これまでのことを踏まえて考えると、人物撮影とレンズの関係には以下のようなことが言えます。

①レンズを変えることで写真のイメージ・表現などが変わる
→カメラマンが望むもの

②レンズを変えることで撮る人・撮られる人の距離感が変わる

①のようにカメラマンは一眼レフで写真を撮る時、レンズをいろいろと変えることで写真のイメージや表現を変えています。これはストレートに言えば「カメラマン側の都合」です。

*誤解の無いようにに補足すると、最初の「レンズを変えると何が変わるのか」でも書いたように、必要な描写方法やレンズの効果を求めてレンズ選びをしなければいけない場合ももちろんあります。
中には撮影場所の制約で自由にレンズ選びができないところもありますので、撮影イメージと距離感の両方が両立できるレンズ選びができれば最高です。

被写体が風景や建物など人物以外ならカメラマンが求める表現を追求すればいいのですが、人物の撮影となるとそこに②の「距離感」の問題が出てきます。

撮影のためとは言え、撮る人・撮られる人の関係性によっては保つべき距離感もありますし、両者の親密さに応じて近づいたり、遠くから撮影したりという微妙な配慮も撮る側にも求められます。

つまり人物撮影においては、

「レンズの使い方」=「写真のイメージと表現を変える」+「撮りたいイメージにするために距離感を調整する」

となります。

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↑普段通りに散策しているイメージ。
カメラを意識させないよう望遠のレンズ(200㎜)でかなり遠くから撮っています。

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↑親密感があるイメージ。
人の視覚に近い50㎜の単焦点レンズで近づいて撮っています。

ポートレート撮影に50mmくらいの単焦点レンズがおススメされる隠れた理由
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具体的にはカップルやファミリーフォトで、何気なく散策しているシーンや楽しそうに遊んだり、話しているシーンを撮る時にはカメラを意識させないように望遠のレンズで遠くから撮るのがいいでしょうし、撮られる人とコミュニケーションを撮りながら様々な表情を引き出す時には広角~標準のレンズで話しやすい距離から撮影するのもいいでしょう。

撮られる人(たち)があまり撮られ慣れていなくてカメラを意識しすぎる時には、最初は少し距離を取って徐々に近づいていく、その中でレンズも調整していくといった工夫も必要でしょう。

人物撮影では「撮られる人の表情を撮るべきイメージに沿っていかに引き出すか」というのが写真の良し悪しを大きく左右します。
ですから「イメージを引き出せる距離感」に適したレンズ選択も撮られる人との関係で重要になってきます。

まとめ

以上、いろいろと書いてきましたが本当に言いたかったことをまとめると次のようになります。

人物撮影では撮りたいイメージとの関係で、レンズの描写や効果を管変えつつも、撮られる人との距離感が最適になるレンズを選ぶことが大事

「最適になるレンズ」とは自分のコミュニケーション能力、撮られる人の撮られ慣れ具合・指示に対する反応を見極め、撮影イメージにより近づけるレンズということになります。

そのために人物を撮ることが多い人は、「自分が撮りたい好きな構図(どれくらい人を入れるか)」「自分のコミュニケーション能力」を知っておいて、それに合わせたレンズを用意しておくといいと思います。

レンズや機材選びとなると撮る人は自分の都合や自分が望む表現に合ったものを選択しがちですが、人物撮影となると撮られる人が快適に撮影に臨めているかも写真の出来に大きく関わってきます。
ですから「撮られる人のために機材を選ぶ」という視点も大事なのではないでしょうか?

「これから人を撮ってみたい」「人を撮り始めたけどなかなか上手く撮れない」という方の参考に少しでもなれば嬉しいです。

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